現代社会では、女性のキャリアアップが主要な課題のひとつとなっています。
本コラムでは、女性社員が最大限の能力を発揮し、充実感を持って働ける環境作りに向けた、企業が取り組むべきキャリアアップ支援策の概要を解説します。
女性社員の活躍推進に関連する主要な法令
企業が女性社員の活躍を推進するためには、まず関連する法令を理解し、遵守する必要があります。以下は主要な法令の内容と、詳細に掲載する行政サイトの一覧です。
(1)育児・介護休業法
育児休業や介護休業の取得条件、期間、事業主の義務などを定めた法律です。特に、育児休業の取得促進や短時間勤務制度の導入が企業に求められています。
▼詳細:厚生労働省「育児・介護休業法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
(2)男女雇用機会均等法
雇用における男女間の差別を禁止し、妊娠・出産・育児に関連する不利益な取り扱いを防止するための法律です。
▼詳細:厚生労働省「雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のために」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/danjokintou/index.html
(3)労働基準法
妊娠中や産後の女性社員に対する労働条件の特例を設け、産前・産後休業の提供や深夜業の制限を規定しています。
▼詳細:厚生労働省「労働基準法のあらまし(女性関係)」
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/danjyokoyou_s.pdf
(4)女性活躍推進法
女性の登用に関する行動計画の策定義務や数値目標の設定を企業に義務付けています。また、一定規模以上の企業は、女性管理職比率などのデータ公表が求められています。
▼詳細:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
これらの法令は、人口減少や労働力不足といった社会的課題への対応として施行されました。女性の労働参加率を高め、多様な人材の活躍を実現することで、経済の持続可能性や企業競争力の向上を目指しています。企業は法令を遵守するだけでなく、これをきっかけに職場環境の改善を進めることが求められています。
女性社員の活躍を推進すべき理由
女性社員の活躍は、主に以下3つの点で会社に良い影響をもたらすと考えられます。一方で、多くの企業では会社の職場環境において課題が見られます。これらの課題に対応するために、具体的な支援策が必要です。
(1)多様性がもたらすイノベーション
女性社員の視点や経験を取り入れることで、新たなアイデアや革新が生まれ、企業の競争力が向上します。多様性を活かしきれていない企業が多く、女性社員の意見や視点が十分に反映されていない現状があります。その結果、イノベーションの機会を逃すケースが見受けられます。
(2)企業の競争力向上
女性社員が活躍することで、職場環境が改善され、優秀な人材を引きつけ、業績向上につながります。女性社員が働きやすい環境整備が不十分な企業では、優秀な人材が離職しやすい傾向があります。このような状況では、企業の競争力が低下する可能性があります。
(3)社会的責任の達成
SDGs目標5「ジェンダー平等」に貢献し、企業の信頼や国際的評価を高めます。ジェンダー平等に対する取り組みが不十分な企業は、社会的信頼を得る機会を失っています。また、SDGs(持続可能な開発目標)への対応が遅れることで、企業ブランドの向上が難しくなる可能性もあります。
企業が取り組むべき女性社員のキャリアアップ支援策
企業が前章のような課題にどう対応し、女性社員が能力を最大限に発揮できる環境を作るかについて解説します。働きやすい職場環境の整備と成長を支援する仕組みという2つの視点から、具体的な取り組みをご紹介します。
(1)働きやすい職場環境の整備
①育児休業と在宅勤務の整備
女性社員が育児と仕事を両立できるよう、具体的には育児休業取得の促進と、在宅勤務の環境整備を行います。
具体的には、従業員向けの育児休業制度説明会を定期的に開催し、制度利用への理解を深めます。また、育児休業中のスキル維持を目的としたeラーニングプログラムを導入し、復職時のキャリア継続を支援します。さらに、在宅勤務の実現に向けたIT環境整備や、在宅勤務手当の支給などの取り組みを進めることが効果的です。
②フレックスタイム制度の導入
女性社員がライフステージに応じて働ける柔軟な勤務体系を構築します。
例えば、勤務時間の選択肢を増やし、従業員が自身の生活状況に合わせて働ける環境を整備します。制度の活用を促進するために、社内で成功事例を共有する取り組みも有効です。制度の活用を促進するために、社内で成功事例を共有する取り組みも有効です。
③安全で快適な職場環境
妊娠中や産後の女性社員の負担を軽減するため、専用の休憩室や柔軟な勤務時間を設定することが考えられます。
例えば、母乳保存用の冷蔵庫を備えた専用スペースの設置や、身体的な負担を軽減するためのリモート会議の推奨が挙げられます。また、健康相談窓口を設け、医療機関との提携を強化することで、女性社員が安心して働ける職場環境を提供します。
(2)女性社員の成長を支援する仕組み
①リーダーシップ育成プログラム
女性社員が管理職やリーダー職に挑戦できるよう、スキルアップ研修やメンター制度を導入します。
具体的には、外部専門家を講師に招いてOJTも踏まえたリーダーシップトレーニングや、実務経験を重ねるための「社内プロジェクトリーダー育成制度」を設けることが効果的です。さらに、女性リーダーの体験談を共有するセミナーを開催し、成功モデルを提示します。
②キャリアコンサルティングの提供
専門のキャリアカウンセラーを配置し、女性社員が個別に相談できる環境を整えます。キャリアパスの選択肢やスキル開発プランを具体化するワークショップの開催や、ロールモデルとなる社内の女性社員による相談会の併設も有効です。
③職場全体の雰囲気
女性社員が率先して能力を発揮することを歓迎する組織の雰囲気を醸成することも重要です。そこで管理職向けのダイバーシティ研修を実施します。無意識の偏見に気づき、それを克服するためのシミュレーションやワークショップを定期的に開催し、組織全体で女性社員を支援する組織風土を作ります。
ライフステージごとの支援策
女性社員がキャリアを形成する中で、それぞれのライフステージに応じた支援策を提供することは、企業にとって重要な課題です。ライフステージに合った支援策を通じて、働きやすい環境を構築し、女性社員が持続的に活躍できる体制を整えることが大切です。本章では、具体的なライフステージに対応した支援策について解説します。
(1)新卒・若手社員期
新卒社員や若手社員にとって、職場環境への適応とキャリア基盤の形成が重要です。メンター制度を導入し、経験豊富な先輩社員が定期的にキャリア相談を行うことで、若手社員の不安を軽減します。また、キャリアプランニング研修を実施し、入社3年以内に目標を明確化する機会を提供します。
(2)結婚・妊娠期
結婚や妊娠期には、家庭生活と仕事の両立が大きな課題となります。この段階では、短時間勤務やリモートワークを容易に利用できる柔軟な働き方を整備します。加えて、妊娠中の健康支援プログラムを提供し、医療機関との提携により定期健診の費用を一部補助します。さらに、パートナーの育児参加を促進するための「配偶者育児休業サポート制度」を導入することも効果的です。
(3)育児期
育児期の女性社員には、仕事と家庭を両立するための支援が不可欠です。育児休業中のスキル維持を目的としたeラーニングプログラムを提供し、復職後の円滑なキャリア継続を支援します。復職後は、段階的な勤務復帰プランを用意し、週3日の短縮勤務からフルタイム勤務への移行をサポートします。また、職場内に保育施設を併設するか、提携保育所を利用できる制度を構築します。
(4)中堅社員期
中堅社員期には、管理職やリーダー職への挑戦を支援する施策が求められます。昇進候補者を対象としたリーダーシップ研修を実施し、部門横断的なプロジェクトへの参加機会を提供します。また、リーダー候補としての資質を評価するシステムを導入し、女性社員のキャリアアップを体系的に支援します。さらに、社内外のネットワーキングイベントを通じて、他業界の成功事例を学ぶ場を提供します。
(5)シニア社員期
シニア社員期には、キャリアの集大成を支援する施策が必要です。長年の経験を次世代に伝えるための社内講師制度を導入し、メンターとして若手社員の育成に携わる機会を提供します。また、退職後を見据えたセカンドキャリア支援プログラムを実施し、外部資格取得の補助や、転職支援サービスの紹介を行います。さらに、柔軟な退職準備プランを提供し、退職時期を段階的に調整できる制度を導入します。
企業が女性社員のキャリア設計を合理的に設計することで、社会的な貢献だけでなく、経済性にも大きな影響を与えます。このコラムが、企業にとって最適な支援策を構築する参考になれば幸いです。