個別賃金分析は、賃金プロット図というものを作成して行います。
賃金プロット図とは、横軸に年齢あるいは勤続年数、縦軸に金額を設定し、社員の賃金を点で示した散布図のことです。
賃金プロット図は、基本給、所定内賃金、時間外手当を含む月例賃金、賞与、総年収の5種類を作成して、現状把握と分析を行います。
- 基本給
- 所定内賃金
- 時間外手当を含む月例賃金
- 賞与
- 総年収
1.基本給プロット分析
賃金総額の約70%~80%を占める基本給は、賃金の基礎となる最も重要な要素です。そのため、基本給部分だけに着目して、年齢と基本給の関係や勤続年数と基本給の関係を分析します。この分析を行うことにより、自社の基本給が年功的なのか、実力主義なのか、法則性がないのかなどを把握します。
2.所定内賃金プロット分析
所定労働時間の勤務に対して支給される賃金を所定内賃金といい、基本給に家族手当、住宅手当、役職手当などを加算したものになります。
所定内賃金を分析する目的は、基本給プロットと同様に、年齢と賃金の相関関係、一般職と管理職の格差の適切性を見ることに加えて、同規模、同地域の同業平均との比較を行い、賃金水準の妥当性を確認することにあります。
同業の賃金水準に見劣りするようであれば、新卒、中途採用ともに他社との採用競争に勝つことは難しく、また、優秀な社員の離職にもつながってしまいます。自社の収益力との関係にもよりますが、ここでの分析結果を踏まえて、賃金水準の是正も検討していくことになります。このような視点から所定内賃金プロット分析を行います。
3.月例賃金プロット分析
所定内賃金に時間外手当(休日出勤手当も含む)を加えた月例賃金プロット分析も行います。この場合の時間外勤務手当は、1年間の平均を用います。
この分析では、一般職と管理職の逆転現象の有無を中心に点検します。基本給プロット図、所定内賃金プロット図で逆転現象がみられる場合は、月例賃金プロット図でも間違いなく逆転現象が発生しているはずですし、基本給プロット図、所定内賃金プロット図では逆転現象が見られなくても、一般職に時間外手当を加えることにより、逆転現象が発生する場合もあります。一般職と管理職での逆転現象が絶対に悪いということではありませんが、一般職よりも責任の大きな管理職の賃金が、一般職よりも高いのはごく一般的なことと言えます。
4.賞与プロット分析
賞与の水準は、同一の業種であっても、企業の収益力や、企業の考え方によって大きく格差が出る賃金構成要素です。
同業と同じ水準にする必要はありませんが、自社の賞与の水準が同業の平均水準と比較して高いのか、低いのかを確認して、会社が意図していないような差があれば、水準の是正を検討する余地があります。
賞与の水準が非常に高く、月例賃金が低いということが判明した際には、賞与の一部を月例賃金に移行することを検討することもあります。
5.総年収プロット分析
総年収プロット分析では、時間外手当を含めた月例賃金の1年分に賞与や特別手当など、すべての賃金構成要素を加算して文字通り総年収の分析を行います。
総年収プロット分析では、総年収における一般職と管理職の格差、同業平均との水準比較が重要なチェックポイントになります。