1.中小企業における人事制度の問題点
50人規模までの中小企業や、創業経営者が代表となっている企業では、人事制度そのものがなく、経営者が社員一人ひとりを評価して、個別に昇給額や賞与の金額を決定しているといったケースが多く見られます。
それぞれの社員に関して、人事評価に影響を与える情報が、経営者に適切に伝わっているかどうかにも疑問が残るところです。良い情報しか伝わっていない社員、悪い情報しか伝わっていない社員など、経営者が適切な評価を行えないことも多々あります。
それとは逆に、制度がないために、全員一律の扱いとしている中小企業もあります。「今年の昇給は全員5,000円」「今年の賞与は全員2ヶ月分」といった処遇の決定方法です。
このような企業では、頑張ることが報われないといった組織風土が醸成され、やる気のある社員、優秀な社員の離職を招いたり、頑張らない社風を作り出してしまうといったことになりかねません。
2.中堅企業における人事制度の問題点
100人を超える規模の企業では、多くの場合何らかの人事制度を整備していることでしょう。こういった規模の企業では、職能資格制度をベースにしているケースが多く見られますが、資格等級の定義があいまいになり、年功的な制度運用に陥ってしまった企業が数多くありました。
また、職能資格制度を導入してから20年、30年以上経過している企業も多く、経営環境の変化と制度のミスマッチが起こり、制度疲労が発生しているケースもよく見られます。
「賃金相場の上昇と賃金表の整合性が取れていない」「上位等級への人員の偏在」「管理職手前の等級へ多くの社員が滞留してしまう状況」「基本給連動型退職金による退職金水準の上昇」「保有能力の陳腐化による人材の劣化」「総額人件費の高騰」など、さまざまな問題が起こっているのです。
3.人事制度の問題点の把握方法
自社の人事制度の問題点を把握する方法としては、人事制度の現状分析を行うことが必要です。現状分析では、自社の人事制度を極力定量的に分析して、自社の人事制度が抱える問題点を浮き彫りにします。
現状分析は、以下のような方法で行い、自社の問題点を把握します。
- 人事制度分析
- 賃金体系分析
- 総額人件費分析
- 賞与分析
- 等級制度分析
- 退職金分析
- 個別賃金水準分析
- 人事評価制度分析
- 基本給ピッチ分析
- 課題のまとめと新人事制度の方向性