Q.人事制度構築のステップを教えてください

人事制度構築のステップを教えてください

人事制度の構築は、下図のとおり大きく分けて6つのステップで進めていくことになります。

人事評価制度構築ステップ

第1ステップ

現状分析と方針決定です。現状の人事制度の問題点、あるいは人事制度がないことによる問題点を整理して、今後どのような方向性で人事制度を構築していくかを決定するステップです。

この現状分析は非常に重要です。現状の問題点をきちんと整理せずに、制度設計に入ってしまうと、プロジェクトを進めていく中で、さまざまな考え方が出てきて、議論がまとまらなくなります。

また、制度設計の方向性が二転三転したり、役員に提示した案が何度も差し戻されたりという事態も生じかねません。この第1ステップで、しっかりとした課題抽出と方向性の決定をしておくことが、良い人事制度づくりには欠かせません。

第2ステップ

等級制度と人事コースの設計です。等級制度は、人事制度全体の骨格に当たる部分です。社員のステージを何段階設定するかということを決定します。
また、総合職、専門職、地域限定社員、職務限定社員など、多様な働き方、貢献の仕方をする社員に対して、複数のコース設定をするのもこのステップです。

第3ステップ

賃金体系の構築を行います。人事評価制度の設計を先に行っても問題はありませんが、やはり経営者にとっては、総額人件費がどの程度変化するのか、という点が非常に気になるところです。したがって、ここでは経営者の視点に立ち、賃金体系の設計を先に進めることをお勧めします。賃金体系の設計は、月例給と賞与に分けて行います。

月例給は、諸手当、モデル賃金、基本給、移行シミュレーションの順に進め、賞与は、支給格差の設定、決算賞与の検討という流れになります。

第4ステップ

退職金制度の設計です。多くの企業では、基本給連動型の退職金制度が採用されています。人事制度を見直す際には、基本給と退職金の関係を切り離すことが重要です。基本的には、新たに退職金の水準を設定し直し、ポイント制退職金に移行することが原則となります。併せて、確定拠出年金、中小企業退職金共済の活用など、外部拠出の方法などについても検討を進めます。

第5ステップ

人事評価制度と関連する諸ルールの設計です。人事評価制度は、設計の選択肢が広く、業種、規模、創業からの経過年数などを踏まえて、自社に最も合った制度構築を進めることが重要です。

賃金体系の設計、退職金制度の設計は、センシティブな情報も含まれるため、経営者や経営幹部の限られたメンバーで検討をしなくてはなりませんが、人事評価制度の設計では、検討メンバーに、各部門の責任者クラスにも入ってもらい、より部門運営の実態に合った制度設計を行うことが大切です。

第6ステップ

運用を開始できるようにさまざまな段取りを整えることです。具体的には、新人事制度運用のマニュアル作成、賃金規程など社内規程の変更、社員説明会の実施、人事評価者研修の実施などです。

いくら良い制度を作っても、社員にメッセージが伝わらなければ効果は期待できません。また、人事評価制度の公平性を担保するためにも、人事評価者の基準合わせは重要です。社員のモチベーションを喚起するためには面談制度の活用も必要です。

最後の仕上げをきちんと行うことで、新人事制度の成否が決まるといっても過言ではないのです。