1.一般的な職能給の昇給配分
年齢給が多く用いられていた高度経済成長期当時は、会社の成長が期待できたため、毎年の昇給原資を比較的多く用意することができていました。
現代では、毎年の経済成長は確かなものではなく、限りある昇給原資の中に年齢給の内訳を作ってしまうと評価の差によりメリハリをつけることが難しくなってしまいます。
年齢給に1,500円配分され、昇格昇給に1,000円配分されるため、昇給に格差をつけられる部分は、習熟昇給の2,000円相当部分に限定されます。
例えば評価によって差をつける場合は下図のようになります。
通常はS評価、D評価はあまり出現しませんので、ほとんどの社員はA評価からC評価の範囲に分布することになります。
この場合、優秀者と標準以下の社員の昇給格差は,1600円にしかならないので、これでは優秀な社員のモチベーションは上がりません。これが職能給の運用実態です。
経済成長率が高く、1人当り平均の昇給原資が10,000円程度確保できた時代には問題ありませんでしたが、今日のように1人当り平均の昇給原資が3,000円~5,000円しか確保できない状況下においては、ふさわしい基本給体系とはいえません。
2.基本給を一本化する
一方、年齢給を廃止し、職務役割基準の基本給に変えた場合、基本給は1本化されます。属人的な要素は手当でカバーし、基本給から属人的な要素を薄くするということです。
「薄くする」という意味は、標準評価を受けた場合に一定水準までは昇給を行うことにより、勤続年数に対する要素が加味されるからです。
基本給を1本化し、昇格昇給も廃止した場合には、同じ昇給原資であっても、メリハリをつけることができるようになります。
基本給を1本化することにより、A評価者とC評価者の格差は3,600円になり、C評価者の昇給も一定金額確保されることになります。
時代背景に合わせ、限られた原資を有効配分し、社員の納得性を高めていく意味において、年齢給、勤続給の廃止は理にかなっているといえます。