一方、以下の5点を満たしていない場合には、降格人事は認められない可能性が高いので注意が必要です。
1.就業規則に明記されていない
降格の制度や具体的な判断基準は、就業規則に明記されていなければなりません。降格人事は、対象の社員にとって減給や精神的なダメージなど、不利益が生じる処分です。そのため、人事部や管理者の判断によって恣意的に降格させることは許されず、根拠となる規定が明示されていることが必要です。
2.懲戒処分が重すぎる
懲戒処分では、規律違反行為の程度と比較して重すぎる処分は無効になるというルールがあります。そしてこのルールは懲戒処分としての降格についても同様です。規律違反行為の内容に照らし合わせて、降格処分が重すぎないかをよく検討することが必要です。
3.当事者の同意がない賃金の引き下げ
降格人事であっても一方的な賃金の引き下げはできません。
降格人事により、賃金の減額が決定した際には、その旨を当事者に事前説明を行い、書面による同意を得ることが必要です。
4.人事権や懲戒権の乱用
降格人事を決定する前には、その社員が現在のポストに不適格なのか、降格処分は業務上必要なのか、会社側に降格の必要性を証明する証拠(始末書や指導記録など)があるのかといった点を十分に検討しなければなりません。
5.性差を理由にした降格人事
日本では男女雇用機会均等法が定められており、雇用や職場での待遇において性差があってはなりません。これは、降格人事においても同様であり、降格条件に男女による違いを設けるのはもちろん、性差によって降格の優先順位を決めることは認められません。