1.傾聴のスキル
簡単な様でなかなかできないのがこのスキルです。具体的には次の3点です。
- 部下の話は最後まで聞く
- 部下の考えを否定しない
- 部下の本心を見抜く
テレビの討論番組を見ると多くの出演者は相手の主張が終わらないうちに自分の意見を話し始めます。これは演出やその時の感情の影響も大きいと思われますが、部下の話が途中で遮られたり否定されたりすると、せっかく抱いた共感が消えてしまい、何も話したくなくなります。この状態に陥るのを防ぐにはニュートラルやペーシングに注意すると傾聴の意識が強まり効果的です。
2.質問のスキル
コーチングで最も大切なスキルが質問のスキルです。相手に気づきを与えるためにはこの質問を使うしかありません。ところで質問は、クローズド質問とオープン質問の2つに大別できます。クローズド質問は「はい・いいえ」で答えられたり、限定された答えしかできない質問で、オープン質問は相手が自由に答えられる質問です。
クローズド質問の例 | オープン質問の例 |
あなたはそれが正しいと思いますか? あなたは勤続何年ですか? | あなたは仕事にどんな価値を感じていますか? あなたの会社での存在価値はどんなものですか? |
コーチングでは圧倒的にオープン質問を使います。コーチングの目的は相手の答えを引き出すことですから、相手に考えさせなければなりません。つまり部下が考え抜いた答えを出すような質問が必要ですからオープン質問が求められるのです。
また、別な分類として肯定質問と否定質問があります。コーチングでは共感や信頼関係を維持することが重要なので肯定質問を多用し、味方であるという姿勢 を出していきます。否定質問を多く使いすぎると、部下がネガティブ思考になり、「これからやるぞ」という気持ちになれません。
肯定質問 | 否定質問 | |
どうすればできますか? | ↔ | なぜできなかったんですか? |
その失敗から何を得ましたか? | ↔ | その失敗で何を失いましたか? |
3.承認のスキル
承認のスキルとは簡単に言えば「褒める」ことです。部下は褒められることにより自発的な行動に移しやすくなります。また、褒めることで上司が部下に関心を持っているというメッセージを発することになるのです。
コーチングでは褒め方を「YOU(ユー)メッセージ」と「I(アイ)メッセージ」の2つに分けています。YOUメッセージは「君は頑張っているね」「今回のレポートはよく分析できているね」といった相手を主語にした褒め方です。 一方、Iメッセージは「君は頑張っていると私は思うよ」「今回のレポートはよく分析できていると感心しているよ」といった自分を主語にした褒め方です。
コーチングに効果的なのはIメッセージです。YOUメッセージは、上司の意見を一方的に押し付けられた、または決め付けられたといったネガティブに受け止める部下もいるからです。また、Iメッセージを使うことで上司である自分自身の主張を明確にすることになり、より責任感を持って発言することになるからです。 ただしIメッセージでもYOUメッセージでも褒める時には、以下のような事項に注意する必要があります。
- 取ってつけたように褒めない
- 結果を目的にして褒めない
- 具体的な言葉で褒める
- 他人と比較する言葉は使わない